夫のLINEで浮気・不倫発覚!?慰謝料請求の証拠となるのか
スマホやSNSが普及し、友人との連絡だけでなく不倫相手とのやりとりにLINEを使うことも一般的になりました。
配偶者のスマホの画面に表示されたLINE通知から、「浮気・不倫されているのではないか」と考えてしまう方も少なくないでしょう。
では、こうした不倫相手とのLINEのトークは、不倫慰謝料を請求する際の証拠として使えるのでしょうか。
また、LINEのトークを証拠として保存したい場合、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。
この記事では、配偶者のLINEに浮気や不倫の疑いのあるトークがあった場合に、それに証拠能力はあるのか、そもそも配偶者のLINEをのぞき見することに問題はないのかを解説し、最後に適切なLINEのトークの証拠収集方法について解説します。
目次
1.LINEのトーク履歴は不倫の証拠になる?
(1) 不倫慰謝料請求の証拠とは
肉体関係ある不倫は、法律上は「不貞行為」と呼ばれ法律上の離婚事由となり(民法770条1項1号)、不貞行為をされた人は損害賠償として不倫慰謝料を請求できるとされています(民法709条、710条)。
肉体関係がなければ通常は不貞行為になりませんので、原則として不倫慰謝料を請求するには「肉体関係があったこと」を立証する必要があるのです。
したがって、当然ながら肉体関係がある現場の映像などが最も強力で直接的な証拠ですが、これはあまり現実的ではないため、ラブホテルに出入りする写真などの間接証拠を積み重ねることが肉体関係を推認させるものとして有効な戦略とされています。
(2) 証拠になりやすいLINEのトーク
こうした観点から考えてみると、LINEのトークであっても、トーク履歴全体から肉体関係を推認させたり、クレジットカードの利用明細やラブホテルの領収書等の他の証拠とあわせたりすることで、不貞行為の証拠とできる場合は十分にあります。
しかし、よく誤解されますが「愛してるよ」「昨日は気持ちよかったね」等といった内容だけでは、肉体関係を推認させるには弱いです。冗談で言っただけ、という言い訳もできるでしょう。
一方で、例えばLINEのトークで「またHしたいね」等と直接的に肉体関係に言及している場合は、一定の証拠になり得ます。
最近の裁判例では、「したくなっちゃうぢゃん」や「○○だけしか入れないんだから」「○○がいっぱいなめてくれたから体軽いの」といったLINEのトーク履歴を証拠として認定し、他に訴訟での本人尋問等とあわせて不貞行為があったことを認定したものがあります(東京地判平成30年9月13日 平成29年(ワ)第13725号)。
また、LINEのトークで2人がこれから密会する情報をつかめれば、不倫の現場を押さえたり、探偵に依頼してラブホテルなどに出入りするところの写真を撮ってもらったりと、他の強力な証拠を得る手がかりとなることもあります。
2.浮気・不倫のLINEと夫婦間のプライバシー
ここまでで、LINEのトークも一定の証拠になりうることはご説明してきました。
しかし、そもそもそもそも配偶者のLINEを勝手にのぞき見することに問題はないのでしょうか。
確かに、たとえ夫婦でもプライバシー権はありますから、配偶者のスマホを勝手に操作してメールやLINEを見たりすれば、プライバシーを侵害することになります。
また、LINEやメールは配偶者と不倫相手とのやり取りですので、配偶者だけでなく連絡相手のプライバシー侵害と、両者間の通信の秘密の侵害にもなり得ます(憲法13条、21条2項後段)。
そのため、場合によっては、プライバシー侵害等について不法行為に基づく損害賠償請求をされる可能性もあります(実際に請求が認められるかどうかはまた別問題です)。
このように、相手のプライバシーを侵害して集めた証拠は、「違法収集証拠」と呼ばれ、裁判所では証拠として扱われないことがあります。
ただ、プライバシーを侵害したからといって、裁判所で絶対に証拠として扱ってもらえないというわけではありません。
メールやLINEのやり取りが不倫の証拠として提出された場合、その収集方法がプライバシーを侵害していることは現実にはよくあるのですが、証拠能力があると認められるケースも少なくありません。
不貞行為をしている配偶者に「LINEを見せて」と言っても見せてくれるはずはありませんし、証拠として保存するにはどうしても一定の侵害になってしまうことが通常だからです。
もっとも、証拠から排除されてしまった例もありますので、絶対に大丈夫という保証はありません。
このように、配偶者のLINEを勝手にのぞき見ることにはリスクが伴います。
また、いわゆるクローン携帯等を使ってLINEのトークを確認すると、不正アクセス行為として刑事罰もありますので、絶対にやってはいけません(不正アクセス禁止法3条、11条)。
具体的なケースで、収集方法と証拠として認められるかについてはぜひ弁護士にお問い合わせください。
3.LINEのトーク履歴を証拠として残すには
それでは、LINEのトークを不倫の証拠として残したい場合、どのような手段が考えられるでしょうか。
パターンとしては、①トークを表示した画面を撮影する、②スクリーンショットを撮る、③データごとバックアップしてしまう、という3つがあります。
(1) LINEのトークでやってはいけない証拠収集
上記3つのうち、②と③はやってはいけません。
③のようにデータをバックアップすると、先ほどご説明した違法収集証拠として排除される可能性が相対的に高くなりますし、そもそもプライバシーや通信の秘密を強く侵害することになります。
不倫相手との会話が気になる、全部把握しておきたいという気持ちはとてもよく分かりますが、こうした証拠収集はやめましょう。
また、②のスクリーンショットはよく話題に出る方法ですが、あまりおすすめはできません。
主な理由は、デジタルデータは改ざんが容易であるということです。特にLINEはトーク画面を作るサービスもあるため、スクリーンショットでは証拠としての信用度に欠けます。
この点は裁判所も重視しており、スクリーンショットを提出してもあまり強い証拠としては扱ってもらえません。場合によっては証拠認定されないこともあります。
さらに言えば、スクリーンショットを撮った配偶者のスマホから、自分のスマホやパソコン等へデータを移す必要もあり、あまりメリットのない方法です。
(2) LINEのトーク履歴は自分のスマホ等で撮影する
したがって、もし配偶者のLINEで不倫が疑われるものがあり、どうしても証拠として保存しておきたいという場合は、ご自分のスマホ等で直接撮影するようにしましょう。
この撮影データもデジタルではありますが、実際にある事物(配偶者のスマホ)を撮影しているので、改ざんは現実的に難しく、証拠として認定されやすいです。
できれば、そのスマホが配偶者のものであることが明らかになるように、そのスマホの電話番号が表示されているプロフィール画面も撮影しておくとよいでしょう。
4.LINEで浮気が発覚したら弁護士へ相談を
LINEのトークは他の証拠と組み合わせることにより、不倫を証明する要素となり得ます。
しかし、実際にどのようなLINEのトークが証拠として使えるのか、どのように使っていくのがよいのか、慰謝料請求に証拠が足りるのかといったことについては、迷われることも多いでしょう。
そのような場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所では、これまでに不倫慰謝料請求に関するご相談を多数お受けしておりますので、経験豊富な弁護士が親身にアドバイスいたします。
初回相談は無料となっておりますので、ぜひお気軽にご連絡ください。