不倫に関するメールのやり取りは証拠になる?
「配偶者がメールで異性と不倫に関するやり取りをしているのを発見した」として、不倫慰謝料請求を検討される方は非常に多いといえます。
しかし、勝手に配偶者のメールを見てスクショなどで保存した場合「これは証拠として採用されるの?」「逆に違法だと言われてしまうのでは?」と不安になる方もいらっしゃるでしょう。
今回は、不倫慰謝料請求をご検討中の方のために、不倫に関するメールは慰謝料請求の証拠になりうるのかどうかについて詳しくご説明いたします。
目次
1.不倫メールは慰謝料請求の証拠になるのか
まずは、不倫(不貞行為)に関するメールのやりとりが不倫慰謝料請求の証拠となりうるのかについてご説明します。
皆様が不安になるであろう「不正アクセス禁止法」についても一緒に見ていきましょう。
(1) メールは不倫の証拠になりうる
メールから不倫や浮気が発覚することは少なくありません。
しかし、「メールしか証拠がないけれど、これで本当に慰謝料請求できるの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
メールは不倫の証拠になるのか、という疑問については、「メールの内容による」というのが答えとなります。
場合によっては決定的な証拠になるケースもありますし、証拠として利用できない場合もあります。
そのため、どのような内容のメールが証拠として有効であり、強い証拠となるのかについて知っておくことが重要です。
まず、不倫慰謝料請求に関しては、不貞行為があったといえる場合に請求が可能となります。
不貞行為があったと主張するためには、「最近様子がおかしい」「会社の女性と仲が良いようだ」という抽象的な事実だけでは難しいといえます。
より具体的に、婚姻中に他の異性と性交渉を行ったことを示す、直接的な証拠が必要となります。
[参考記事]
LINE・メールだけの関係!肉体関係なしの浮気の慰謝料請求は可能?
一番よくある証拠としては、探偵に依頼し浮気相手とラブホテルに入る写真を撮ってもらい、証拠として提出するというものです。ラブホテルに数時間異性と滞在していたことがわかる写真があれば、性交渉があったと推測できます。
メールに関して言うと、性交渉の内容を示す直接的な文言・やりとりがあれば決定的な証拠となるでしょう。
しかし、「昨日は楽しかったね」などの曖昧さがある場合には、弱い証拠となってしまいます。
(2) 間接的な証拠として利用できる場合も
性交渉に関する記載はないものの、「匂わせる程度」の記載があることは考えられるでしょう。例えば、キスやハグに関する記載があれば、性交渉もあったのではないかと考えることはできます。
この場合でも、証拠としては利用できないのでしょうか?
結論としては、性交渉の決定的な証拠でない場合でも、間接的に証拠として利用できることはあります。
メールでの仲良さそうなやりとりに加え、写真や動画、探偵の報告書などと一緒に不倫があったことを証明するということです。
直接的なメールでなくても、不倫を匂わせるような文章や写真、動画、証言は証拠の1つとして役立つ場合があるため、必ずしも無駄になるわけではないのです。
(3) 「勝手にメールを取得すること」は不正アクセス禁止法?
「夫のスマホを盗み見て、LINEなどにある不倫に関連するメールを取得した」という場合、違法とならないか不安になる方もいるでしょう。
実際のところ、他人のスマホの中身を勝手に見てスクショや撮影などを行うことは不正アクセス禁止法3条にて禁止されています。これを破った場合には「3年以下の懲役又は100 万円以下の罰金」に処される可能性があるでしょう。
また、刑事裁判などでは違法収集証拠排除法則という原則があるため、不正アクセス禁止法に触れる行為など違法に取得した証拠は証拠として利用できなくなってしまいます。
しかし、実際上は勝手に撮影したメールが、不倫裁判の証拠として利用されることは一般的なことです。
理由としては、違法収集排除法則は本来刑事上の考え方であることに加え、夫婦間での当該行為の違法性は低いことから、民事では余程のことがない限り証拠能力は否定されないと考えられています。
実際に判例でも、メールを勝手に取得した不倫慰謝料請求裁判にてメールの証拠能力を認めています(東京地方裁判所平成18年6月30日判決)。
当該判例では、妻の不倫相手を訴え、不貞行為を証明するために妻に内緒でメールを取得したケースの証拠能力が争われました。判決では、証拠能力の判断について「その手段方法や態様等が著しく反社会的と認められるか否かを基準として,考察するのが相当」と判示しました。
したがって、「夫がお風呂に入っている間にスマホからメールの証拠を取得した」など、通常の取得方法であれば、著しく反社会的とはいえず、証拠として採用されるでしょう。
2.証拠として有効なメールの取得方法
次に、有効な証拠とするためのメールの取得方法についてご説明します。
(1) 不倫メールを証拠とするために必要なこと
「不倫のメールを見た」という場合は、次の手順に従って証拠を取得するようにしてください。
- 本文だけではなく送受信者名、送受信日時も撮影する
- スマホ全体を写す
- できる限り性交渉に関連する内容を撮影する
- メールの全文を撮影1枚に入りきらない場合は複数に分ける
- バックアップをとっておく(メールの証拠を紛失しないため)
不倫メールを見つけたら、本文を撮影するのはもちろんですが、送受信者名や送受信日時も一緒に撮影してください。
証拠として採用されるためには、誰が誰に送ったものか、いつ送られたものなのか、という点が非常に重要です。これがないと強い証拠になりません。
また文章だけを写すのではなく、スマホ全体を別のカメラで写しましょう。
文章の内容のみを証拠として提出しても「誰の文章か分からない」と反論されてしまいます。そこで、人の名前や日時だけでなく、配偶者のスマホであることもわかるように撮影する必要があります。
また、メールのやりとりが膨大である場合、どれを撮影すべきか迷います。
このときはできるだけ性交渉に関連するメールを保存しましょう。また、できるだけ多くの内容を保存しておくと良いといえます。
文章が長い場合、1枚の写真には収まりきりません。この場合は、文章の流れがわかるように複数枚撮影してください。
(2) スクショは証拠として有効?
最近では、スクリーンショットを証拠として持って来られる方も多いといえます。
簡単に画面撮影ができるので、自分のスマホに送信してその履歴を消してしまえば相手に見つかることもなく、証拠を取得できるでしょう。
しかし、スクリーンショットの場合は偽造が疑われてしまう可能性があります。
デジタルデータは改変可能であるため、この部分を指摘されたら面倒なことになります。また、スクショをした後に送信するよりも、自分のスマホで相手のスマホごと撮影する方が手間もかかりませんし、不正アクセスの問題も生じません。
よって、ご自身のスマホでも、カメラを利用しても構いませんので、別の撮影器具を使って撮影するのがベターです。
3.不倫の証拠が揃ったら弁護士へ相談を
メールを含めた不貞行為の証拠がある程度揃ったら、不倫慰謝料請求に強い弁護士に相談しましょう。
メール以外にも有効と思われる不倫の証拠については、以下のコラムで解説しています。
[参考記事]
不倫の証拠集め|難しい不貞行為の立証のために重要なこと
損害賠償請求が可能かどうかも含めて一度専門家に話を聞いてもらうのが一番です。
不倫慰謝料請求でお悩みの方は、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。