離婚

不倫が原因で離婚した場合の親権の行方

配偶者の不倫(浮気)が原因で離婚する時、その夫婦の間に子どもがいたら、親権はどのようにして決まるのでしょうか?
「親権の取り合いで勝つ方法を知りたい!」という方もいらっしゃるでしょう。

不倫した側は子どもの親権者になれないと思われていますが、実は、不倫していても子どもの親権を取ることは可能です。
一方で、不倫をしていると母親でも親権を取れないという事例もあります。

今回は、不倫して慰謝料を請求した後に離婚する場合の親権問題について解説します。

1.親権者の判断基準

世間一般では、「不倫をしたら親権者として認められない」と思われていることが多々ありますが、実は、不倫と親権には直接の関係はありません
不倫した配偶者であっても、子どもの親として適切であれば親権者として認められる可能性があります。

不倫した配偶者に親権が認められない事案が多いのは、不倫する人に「家族に関心がなく、子育てにも関わっていなかった」「不倫相手と同居している(子どもの親権者になったら子どもと不倫相手が同居することになる)」「離婚前に不倫相手と子どもを会わせていた」など、不倫の事実以外に親権者として不適切な点があるからでしょう。

すなわち、不倫そのものが問題なのではなく、不倫に伴って親権者として不適切な事情が発生するために親権が認められにくくなるのです。

では、実際にはどのような判断基準で親権者が決まるのでしょうか?

(1) これまでの養育実績

まず、子どもが生まれてから誰が主に育児に関わってきたという点です。

乳児期にミルクをあげたり、おむつを替えたり、お風呂に入れたりする他、子どもが成長してからも、勉強や習い事を見てあげたり、幼稚園・学校との連絡に積極的に関わっていたりすると、親権が認められやすいです。

(2) 子どもの愛着の程度

これは、子どもが両親それぞれにどの程度の愛着をもっているか(懐いているか)ということです。
当然、子どもに好かれている親の方が親権者として認められやすいです。

また、現在の子どもとの関係が良好であれば、親権者として認められやすいです。

(3) 離婚後予定される子どもとの関わり

離婚して親権者となった場合に、子どもとどの程度コミュニケーションをとれるかという点も重視されます。

例えば、フルタイムで働いていて子どもとはほとんど一緒に過ごせないという場合、親権者になりにくいです。海外出張などが多い方も親権取得が難しくなります。

反対に、パートなので夕方からは子どもと一緒に過ごせる、実家に戻って家事を主に行う、という方は親権をとりやすいです。

(4) 居住環境

居住環境が良い方が親権者になりやすいです。具体的には、一軒家か、マンションかアパートか、間取りはどのようになっているか、持ち家か賃貸か、その他地域性などが考慮されます。

ただ、居住環境が良ければ親権者になれるというものではありません。子どもと一緒に住んできちんと子育てできる環境であれば、相手より住環境が劣っていても親権を取れる可能性があります。

(5) 経済力

収入や財産も一応評価の対象となります。

ただし、経済力が高ければ親権者になれるわけではありません。無職だったり収入が低かったりしても、相手から受け取る養育費や児童扶養手当などを合わせて子供を育てていけるなら、親権が認められる可能性があります。

(6) 離婚後の面会交流に対する考え方

離婚後、相手との面会交流を積極的に行う姿勢を持っていると、親権者として認められやすいです。

子どもにとって、別居している親と交流を続けることは、健全な成長のために重要な要素と考えられているからです。

(7) 子どもの年齢

子どもの年齢も親権に影響します。

乳幼児期の子どもには母親が必要と考えられているので、0~3歳くらいの場合には大抵の場合で母親が親権者となります。
これに対し、子どもが学童期に入ってくると、父親に親権が認められる例も増えてきます。

また、子どもの年齢が上がると、子どもの希望も考慮されるようになります。
10歳以上で段々とその意思を尊重されるようになり、15歳以上になると子ども自身の希望を尊重すべきだと考えられるので、子どもが自分の意思で親権者を選べます。

反対に、低年齢の子どもはその場にいる親や同居親による影響を大きく受けるので、言葉が本心と一致していない可能性が高く、例えば3歳や4歳の子どもが「パパと一緒に暮らしたい」と言ってもその言葉が尊重されることはないでしょう。

(8) 現状優先

離婚前に夫婦が別居することも多いです。その場合、子どもはどちらか一方の親と暮らしています。

その時に子どもが落ち着いて暮らしているのであれば、現状を尊重してそのまま同居親に親権が認められる可能性が高くなります。

子どもを取り巻く環境を何度も激変させることは、子どもへの負担になるからです。

【兄弟不分離の考え方】
子どもが複数いる場合には、「兄弟不分離」の考え方が適用されます。つまり、兄弟姉妹の親権者を分けないということです。兄弟姉妹は一緒に育った方が子どもにとって良い影響が及ぶと考えられているからです。
例えば、子どもが2人いるからといって、母親が姉・父親が弟を引き取るようなことはできないと考えるべきです。

2.不倫していても親権を取れるケース

では、不倫していても親権を獲得できるケースとしてはどのようなものがあるのでしょうか。

(1) 不倫相手と別れて子育てに対する環境を整えている

不倫した配偶者が子どもの親権を獲得するには、不倫相手と別れることが非常に重要です。
不倫相手との関係が続いていると、離婚後、子どもと不倫相手が継続的に関わることが予想され、子どもへの悪影響が懸念されるからです。

親権を獲得するには、不倫相手と別れて住環境を整え、子どもと一緒に生活ができる状態をきちんと作る必要があります。

ただし、単に「不倫相手と別れた」と言うだけでは信用してもらえない可能性が高いです。

引っ越しをして不倫相手と離れたり、実家に戻ったり、あるいは今住んでいる家に実家の親に来てもらって子どもと一緒に同居したりするなど、心を入れ替えたことを証明する努力をすべきです。

(2) 自分が母親で子どもが乳幼児

子どもが乳幼児の場合には、先述の通り不倫をしていても母親に親権が認められる可能性が高くなります。裁判所には、「乳幼児には母親が必要」という根強い考えがあるからです。

子どもが乳幼児なのに母親に親権が認められないのは、母親が重い病気であったり、子育てする意思を持っていなかったり、子どもを虐待していたりして、明らかに親権者として適切ではない場合に限られてきます。

【母親でも親権を取れないケース】
まとめると、母親でも親権をとれない理由は、以下のようなものが考えられます。
・子どもがある程度の年齢になっている
・離婚時に父親が子どもと住んでいる
・子どもを育てる環境が整っていない
・子どもを虐待していた
・子どもが父親を希望している(子どもが10歳を超える頃からの意思)

(3) 離婚時に子どもと一緒に平穏に暮らしている

不倫していた親であっても、離婚前に相手と別居した際子どもと一緒に生活しており、子どもが平穏に過ごしていれば、そのまま引き続いて親権が認められやすいです。

ただし、見かけ上は子どもが落ち着いていても、継続的に不倫相手と会っていたり子どもと不倫相手を会わせたりしていると、親権者として不適切であると判断される可能性が高まります。

(4) 相手が親権取得を望んでいない

不倫している親が親権者となることを望んでおり、一方で離婚相手は親権を望んでいなければ、不倫していた親が親権者となることができるでしょう。

3.親権を決めるまでの流れ

最後に、不倫が発覚した後、親権が決まるまでにはどのような流れになるのかご説明します。

(1) 話し合いをする

子どもの親権を決めるため、まずは夫婦間で話し合いをします。
当事者が納得さえすれば、調停・裁判までせずとも自由に親権者を決められます。不倫した配偶者が親権になることも、父親が乳幼児の親権者になることも可能です。

親権者についての合意ができたら、市区町村役場で「離婚届」の用紙をもらってきて、必要事項を記入し、夫婦が署名押印をして完成させます。

離婚届の用紙には子どもの親権者を書く欄があるので、事前の話合いで決まった親権者を記入して役所に提出すると、離婚が成立して新たに離婚後の戸籍が編成されます。

離婚後の子どもの戸籍には、離婚届に記載されていた方の配偶者が、単独の親権者として記載されます。

(2) 離婚調停をする

話し合いによって親権者を決められないときには、家庭裁判所で離婚調停をする必要があります。

調停では、調停委員が夫婦の間に入り、親権を始めとした離婚条件の話合いを進めます。

不倫していると調停委員に悪い心証を抱かれてしまうので、不倫をしていた側は比較的不利になるケースが多いです。

とは言え、調停委員による説得には強制力がないので、納得できなければ調停で合意する必要はありません。どうしても親権者になりたい場合、調停を不調にして訴訟によって争うことは可能です。

(3) 訴訟によって親権者を決める

調停が不成立になったら、離婚訴訟によって親権者を決める必要があります。

離婚訴訟になると、裁判所の調査官が子どもの状況や今までの育児に関する経過などを詳細に調べ、裁判官に報告書を提出します。

その報告内容に基づいて、最終的に裁判官が親権者を決定します。

4.不倫問題でお困りなら弁護士までご相談ください

不倫と親権には直接の関係がないといっても、実際には不倫すると親権をとりづらくなることが多いです。

また、「不倫した相手に絶対に親権を渡したくない」という方もたくさんいらっしゃいますが、きちんと対策をしないと不倫した配偶者に親権を取られてしまう可能性も大いにあります。

子どもの親権をより確実に取得するため、子どものより良い成長環境を確保するため、離婚問題に詳しい弁護士に代理交渉や調停・訴訟等の手続きを依頼しましょう。

なお、不倫問題でお困りの場合には、相談・解決実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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