慰謝料

LINE・メールだけの関係!肉体関係なしの浮気の慰謝料請求は可能?

「配偶者がふとしたときにスマホを見る回数が増えた。怪しんでLINEを見てみると、他の女との怪しいやりとりが…。」
このような状況に遭遇した場合、浮気を疑っても仕方ありません。

通常、LINEやメールでのやり取りだけ、キスやデートだけで肉体関係がない場合、不倫慰謝料をとることは難しいです。
しかし、場合によっては慰謝料を取れることもあります。

そこで今回は、肉体関係がない浮気の場合に慰謝料が取れるケースをご説明します。

1.不倫・浮気の慰謝料請求ができる基準

日本では、婚姻関係にある夫婦のどちらかが不倫に走ってしまった場合、不倫をされた配偶者から不倫をした配偶者・不倫相手に慰謝料を請求することができます。

これは、不倫が婚姻関係を壊すものであり、配偶者に対して持つ貞操権を侵害していることから認められるものです。

不貞行為は上記のような理由から不法行為に該当するものと考えられ、不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条、710条)を行使することができます。

しかし、不倫慰謝料請求をするためには、平穏な夫婦関係を壊すほどの関係が必要となります。
そのため、民法上不倫慰謝料が請求できるのは不貞行為、つまり肉体関係が必要と考えられているのです。

デートやキス、LINEの怪しいやり取りだけでは、原則として不倫慰謝料請求をすることは難しいと考えるべきでしょう。

とはいえ、過去には肉体関係がない場合でも裁判で慰謝料請求が認められた事例があります。
以下のような「健全な社会通念に照らし、男女の交際としては社会的妥当性の範囲を逸脱するものであり、婚姻関係破綻の原因となった場合」には、不法行為責任が認められる可能性があるでしょう。

  • 記念日などにプレゼントを交換する
  • 2人で旅行に行く
  • 結婚を前提に交際していることを配偶者に伝え、婚姻させてほしいと懇願する
  • 何度も会い、交際を続けている証拠がある

どのケースも、一定程度の親密さがある事実を認めているのがわかります。

実際上は、どれか1つの事実があるだけでは足りるとは言い切れず、いくつかの事実に対する証拠が認められた場合に慰謝料請求を認める場合が多いようです。
(※参考判例 東京高裁昭和47年11月30日、東京簡裁平成15年3月25日、東京地裁平成17年11月15日)

【肉体関係の決定的な証拠がなくても慰謝料請求は可能】
不倫慰謝料請求に肉体関係が必要である以上、浮気をした配偶者や不倫相手が肉体関係は一切なかったと主張しているケースでは、肉体関係があったと客観的に認められる程度の強力な証拠が必要です。
もっとも、決定的な証拠がなければ一切慰謝料請求が認められないのかというと、実際はそうではありません。デートやキス、LINEのやりとりなどでも、慰謝料請求が認められた事例はあります。
具体的には、肉体関係がなくとも、繰り返しデートなどで親密な関係を築いていたと考えられる証拠がある場合には、これにより婚姻関係が破綻したとして慰謝料請求が可能となります。諦めずにできるだけ多くの証拠を積み上げていくことが大切です。

2.「肉体関係なし」の慰謝料相場

肉体関係がなくとも何度もデートを重ねているなど、通常の友人関係とは考えられないほどの親密さがあると考えられる場合、慰謝料を請求できる可能性があることはわかりました。

では実際、いくらくらいの請求が可能なのでしょうか?

通常、不倫慰謝料の相場は、50万円〜300万円といわれています。
しかし、これは不貞行為があった場合を想定しているため、肉体関係がない場合はこの相場は当てはまりません

デートやキスなど、肉体関係がない場合には多くても100万円程度であり、一般的には50万円以下の金額になることも少なくないでしょう。

肉体関係がありそうだけれど、証拠が見つからないという場合でも基本的には同じです。

相手方が肉体関係はなかったと反論している場合に、肉体関係に関する証拠もない場合には、100万円以上の慰謝料を請求しても減額交渉をされてしまう可能性は高いといえるでしょう。

このように、肉体関係がない場合には、通常の不貞行為の場合の不倫慰謝料よりもかなり金額が少なくなってしまう可能性が高いということを理解しておくべきです。

3.不倫慰謝料請求をするための証拠の集め方

肉体関係がない場合でも慰謝料請求をしたい場合は、証拠が必ず必要です。そこで、不倫慰謝料請求事件において、採用される証拠の内容や集め方をご説明いたします。

(1) 不倫慰謝料請求の証拠の内容

不倫慰謝料請求をする場合は、どのようなものが証拠となるのかを知っておくべきです。警戒されてしまった後では入手できないことが多いため、できる限り最初は相手に知られないように集めていくのがベストといえるでしょう。

証拠になるものとしては、以下のものが挙げられます(一般的な証拠として、肉体関係がある場合も含みます)。

  • 肉体関係を示す写真(肉体関係がない場合は、デートや親密さをうかがわせるもの)
  • 音声データ、撮影データ(肉体関係を示すものが良い)
  • LINE、SNS等のメッセージのやり取り(「昨日は楽しかったね」などのやり取り)
  • 手紙(浮気相手・配偶者のどちらかが送ったもの)
  • 日記(帰りが遅い日、外泊した日、などを綴ったもの)
  • 興信所の調査報告書
  • クレジットカードの利用明細、レシート(2人で食事したレストランの領収書など)

どの証拠にもいえることですが、その証拠からすぐに肉体関係があったことがわかるものがベストです。性行為やそれに類似する行為が撮影されているものがあれば、不貞行為として認められる可能性は高くなります。

また、自宅やラブホテルに出入りしている写真も有効です。二人だけで外泊、旅行などで撮影した写真、音声、動画なども内容によって有効だといえるでしょう。

証拠には様々なものがありますが、できる限り多く集める方が良いと言えるでしょう。

何が証拠になる?不倫の証拠の種類と集め方

[参考記事]

不倫の証拠集め|難しい不貞行為の立証のために重要なこと

(2) 証拠を集める際に気をつけるべきこと

証拠をたくさん集めても、裁判や交渉で使えないものも多くあります。証拠を集める際には以下のことに注意するようにしてください。

  • 撮影日時がわかるものであること
  • 継続して確認できるものであること
  • ホテルや自宅の出入りは、入る時と出る時の両方の証拠が必要であること
  • スマホの内容は、スクショではなくご自身のスマホで画面ごと撮影すること

証拠となるものの場合、基本的にはいつ撮影されたものか、いつの証拠なのかということがはっきりしていないと証拠として採用できないこともあります。そのため、日付が記録されていることは注意点の1つといえます。

また、デートの写真がある場合、できるだけ別の日の写真や証拠がないかを確認してみましょう。継続的に会っていたことを示す事実があれば、交際の事実が明らかになるため有効な証拠となります。

そしてホテルや自宅を出入りしている写真に関しては、入る・出るの両方のタイミングの撮影が必要です。というのは、入っただけ・出ただけでは中で不貞行為をする時間までは認定できないからです。

不貞行為をしているというためには、入る時から出る時までの間はそれなりに長い時間が経過していることが必要です。この場合、性行為があった証拠になるため、慰謝料が上がる可能性があります。

またLINEの内容などをスクショしてご自身に送信するなどの集め方もよくありますが、これは改ざんを疑われてしまう可能性があります。怪しい内容は、ご自身のスマホで画面ごと撮影するのが良いでしょう。

デジタルの証拠は自分で改ざんできるため疑われてしまう可能性があります。証拠集め用に使い捨てカメラを利用するのもおすすめです。

4.浮気の証拠を集めたら弁護士に相談を

不倫慰謝料請求をする場合、肉体関係がないと慰謝料が認められないか、認められても額が大幅に減ってしまいます。「肉体関係はなかった」という相手の言い分を鵜呑みにせずに、証拠を集める努力をすることが大切です。

「自分では証拠を集められない」というような場合、高額ですが、探偵や興信所に調査を依頼することもお勧めです。証拠の集め方を変えたら肉体関係があったことの証拠が見つかったというケースもあるため、一度専門家に相談することをおすすめします。

相手をどうしても許せない場合は、慰謝料請求をすることが有効です。離婚する・しないに関わらず気持ちの整理をつけることができ、今後の浮気の抑止力にもなります。

不倫慰謝料請求をする場合は、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。適正額の慰謝料を請求するため、弁護士が親身になってサポートいたします。

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