不倫の証拠

探偵に依頼した浮気調査費用を相手に請求することは可能か?

配偶者の不倫が発覚した場合、配偶者を問い詰めても不倫を認めないケースがよくあります。
また、浮気相手や配偶者に慰謝料を請求する場合は不倫の証拠が必要になるため、証拠を集めることに苦労する方も少なくありません。

そんなときに利用するのが探偵事務所です。

しかし、浮気調査には費用がかかるので、これを浮気相手や配偶者への損害賠償に含めることはできないかと考える方も多いでしょう。

そこで今回は、「探偵に依頼した浮気調査費用を不倫相手に請求できるか」を解説します。

1.浮気調査費用は不倫相手に請求できる?

浮気調査費用にお金をかけてしまった場合、できるだけ不倫相手から回収したいと考えると思います。これは可能なのでしょうか?

結論から言って、請求をすること自体は可能です。もっとも、調査費用全額が請求できるわけではないケースや、請求が認められないケースも多くあると考えるべきでしょう。

(1) 不倫慰謝料の損害賠償の範囲

不倫が発覚したら、不倫された配偶者は不倫をした配偶者と浮気相手の両方に慰謝料の支払いを求めることができます。

これは、法律上守られるべき円満な婚姻生活を侵害したことについて金銭的に償ってもらうことが民法上認められているからです。

もっとも、不倫(不貞行為)について不法行為の損害賠償ができからと言って、必ずしも、不倫の証拠を集めるためにかかった費用を請求できるわけではありません。

損害賠償の範囲については、民法416条1項に規定されていますが、「通常生ずべき損害」についてのみ賠償範囲に含まれることが明記されています。民法416条1項は、債務不履行について規定されていますが、判例により、不法行為にも類推適用されると理解されています。

そして、民法416条1項規定する通常生ずべき範囲とは、当該不法行為から一般的に生じるであろうと認められる相当因果関係を有する範囲と考えられています。

つまり、不倫慰謝料を不倫相手に請求する場合は、不倫慰謝料そのものだけでなく、「不貞行為によって生じる一般的な損害である相当因果関係を有する範囲の損害」は不倫相手に請求できることになります。

このように、不倫慰謝料自体以外でも、これに付随する損害を請求することは法的に可能です。

(2) 浮気調査料は一部請求できる可能性

では、探偵を雇った際にかかる浮気調査料は、「通常生ずべき損害」として不倫相手に請求できるのでしょうか?

先にお伝えした通り、損害賠償の範囲については、当該不法行為と相当因果関係にある範囲と考えられています。
つまり、この範囲を超えてしまうと、請求が認められない、減額されてしまう可能性もあるということです。

例えば、100万円の調査費用がかかったとします。このうちすべての金額が認められるわけではなく、一般的に見て妥当だと考えられる範囲の金額についてのみ、請求が認められることになります。

調査の内容などにもよりますが、100万円全額を認めるケースもあれば、30万円が相当と認められるケースもあります。
(これについて、詳しくは次の章でご説明します。)

全額の費用が請求できるわけではないのは弁護士費用も同様です。原則として、判決で獲得した慰謝料の10%程度について破弁護士費用として不倫相手(あるいは不倫をした配偶者)に請求することが可能です。そのため、弁護士費用全額を請求することはできいことが多いでしょう。

以上から、探偵を雇った際にかかる浮気調査料は、不倫相手に請求することができますが、全額が認められない可能性もあるため、費用のかけすぎには注意が必要です。

2.浮気調査費用の請求が認められるケース

浮気調査費用の請求が認められることは理解できましたが、具体的にどのようなケースで認められるのでしょうか。

浮気調査費用の請求が認められる条件や、実際にあった判例について見ていきましょう。

(1) 浮気調査費用の請求が認められる条件

「通常生ずべき損害」として相当因果関係の範囲にあるかどうかは、個別事案に応じて判断されます。

具体的には、「調査の必要性」「立証への寄与度」「金額の妥当性」 が問題となります。

①調査の必要性

「調査の必要性」に関しては、以下のようなケースが当てはまります。

  • 不貞行為を不倫相手が認めていない
  • 浮気を立証するための決定的な証拠が収集できない

例えば、不貞行為の決定的な証拠を、すでに自分で掴むことができたのに、追加で探偵に依頼した場合には、調査の必要性がないと判断される可能性があります。

探偵に依頼して決定的な証拠を得たのに、不安からさらに別の探偵に依頼した場合も同様です。

②立証への寄与度

「立証への寄与度」に関しては、以下のようなケースが当てはまります。

  • 探偵の浮気調査結果が不倫を立証する決定打になった
  • 探偵の見つけた間接証拠がいくつもあり、それが不貞行為の認定につながった

探偵に依頼したものの、その証拠が使えないものばかりで立証に影響しなかった場合には、寄与度が低いと判断される可能性があるでしょう。

③金額の妥当性

最後に、「金額の妥当性」については以下のようなケースが当てはまります。

  • 10万円から30万円程度の浮気調査費用
  • 調査内容から高額な費用が必要だった場合

一般的に、探偵に浮気調査を依頼した場合には、少なくとも10万円〜30万円程度の浮気調査費用がかかると言われています。
そのため、調査の必要性と立証への寄与度の基準を満たせば、この程度の範囲の金額であれば全額が認めてもらえる可能性は高いといえます。

また場合によっては100万円以上の高額な調査費用がかかる場合もあります。不倫関係が海外で行われていたケースなどでは、人件費、交通費などでかなりのお金がかかるケースもあるでしょう。

不倫の証拠を集めるのが非常に難しいケースで、期間が長かった場合なども、高額な調査金額について相当因果関係を認めるケースがあり得ます。

(2) 浮気調査費用の請求が認められた事例

浮気調査費用を請求すること自体は、それほど珍しいことではありません。判例でも認められています。

例えば、以下のような事例があります。

東京地裁平成22年7月28日判決(平成21年(ワ)第26922号)
この事案では、17万円程度の調査費用につき、探偵による調査がなければ不貞行為の立証が難しかったことを認め、全額の請求を認めました。

東京地裁平成23年12月28日判決(平成22年(ワ)第41115号ほか)
この事案では、160万円程度の調査費用のうち100万円が損害として認められています。これは立証への寄与度が高かった(決定的な証拠)であったことや、当事者が不倫を認めていなかったことなどを理由として、一部を相当因果関係の範囲として認めました。

否定された事例では、以下があります。

東京地裁平成22年2月23日判決
この事案では、100万円の調査費用がかかり、費用の請求が認められませんでした。理由は、当初から不貞行為の事実を当事者が認めていたことや、調査結果の立証に対する寄与度が低いことです。

このように、浮気調査費用の請求は一般的に行われますが、高額な場合や不必要な調査だった場合には、減額や請求が認められないという結果になっています。

3.浮気調査費用を請求したい場合にすべきこと

最後に、浮気調査費用を慰謝料と一緒に請求したい場合にすべきことをご説明いたします。

(1) 信頼できる事務所を選ぶ

先にお伝えしたように、調査費用の一部しか認められないことも十分にあり得ます。そうなると、高額すぎる調査費用の探偵事務所は避けるべきという結論になります。

もちろん、場合によっては調査期間が長くなり費用が嵩むということも考えられますから、他と比較して設定料金が高額すぎないか、相場であるかどうかを確かめることが必要です。

料金面以外でも、以下の点に気をつけてください。

  • 契約内容や料金の説明があるか
  • 探偵業の届け出をしているか
  • 調査費用が妥当か(高すぎず安すぎず)
  • 調査報告書はどのような内容か(粗雑な内容でないか)
  • 実績があるか

多くの探偵業は、適正な料金で運営を行っています。しかし、まれに不当な金額を請求する探偵事務所があるので注意が必要です。

最初に、料金や契約内容としてどのような調査をしてくれるのかについてきちんと説明してくれる事務所を選びましょう。追加の費用などがかかる場合もありますので、その点も確認すべきです。

また探偵業の届け出を各都道府県の公安委員会に提出しているかも1つの見極めポイントです。違法な業者を避けることができるので確認しましょう。

さらに、調査報告書の内容についてこれまでのサンプルなどがある場合には見せてもらいましょう。

このように、探偵事務所を選ぶ際は信頼できる事務所を選ぶことが大切です。
1つの探偵事務所への相談できめず、複数の探偵事務所に相談に行くと良いでしょう。

不倫における探偵・興信所と弁護士の大きな違い

[参考記事]

不倫案件についての探偵・興信所と弁護士の役割の違い

(2) 弁護士に依頼する

決定的な証拠を集めることができれば、弁護士は必要ないと考えるかもしれません。

しかし、証拠があっても、相手方がしっかりとお金を支払うとは限らないということを注意すべきです。

確かに、ご自身で交渉して慰謝料を支払ってもらうと約束することも可能です。しかし、「口約束で結局支払ってもらえなかった」「紙に書いたけど守られなかった」「相手方に逃げられた」「思ったより少ない金額しか受け取れなかった」など、問題のある結果しか残らないこともあります。

ご自身で交渉することに少しでも不安があるならば、弁護士に任せるべきでしょう。

[参考記事]

不倫・不貞行為に強い弁護士の選び方

4.証拠が揃ったら、まずは弁護士へご相談ください

正当な金額の慰謝料・浮気調査費用を受け取りたい場合は、不倫慰謝料請求に強い弁護士にご相談ください。
不倫慰謝料のために最適な方法をアドバイスし、満足できる金額が受け取れるようにサポートいたします。

不倫の証拠が揃ったら、どうぞお早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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