不倫慰謝料請求された場合の裁判の流れ
不倫慰謝料の話し合いを相手方と進めているものの、なかなか交渉が進まないというケースがあります。
金額などで折り合いがつかない場合、「裁判」が頭をよぎることもあるでしょう。
実際のところ、不倫慰謝料請求で裁判になることはあるのでしょうか?
今回は、不倫慰謝料請求を受け裁判が起こされるケースと、実際の裁判の流れ、裁判で不利にならないための対策について解説します。
目次
1.不倫の損害賠償請求が裁判になるケース
不倫慰謝料請求に関しては、通常、当事者間や弁護士を挟んだ交渉で進めていくケースがほとんどです。
多くのケースでは、話し合いで折り合いをつけることができ、そのまま事件解決となります。
というのも、裁判になると当事者双方にとって面倒なことになることが多く、解決に時間がかかることからも望まない人が多いためです。
不倫が起きたこと自体でストレスがかかっているため、これ以上負担になるようなことは進んで行いたくないのが通常でしょう。
しかし、場合によっては不倫慰謝料請求でも裁判に発展することがあり得ます。
「交渉を何ヶ月も続けているが、これ以上お互いが折り合えそうにない」という場合には、裁判を起こすしかないという結論に達するのです。
仮に慰謝料を請求している側が「裁判を起こす」と言っているのならば、交渉期間や本気度にもよりますが、裁判が起きる可能性は0ではないといえるでしょう。
具体的には、以下のような状況に陥ると、裁判に発展する可能性があります。
- 損害賠償金額で折り合いがつかない場合
- 不倫の事実を否認し続ける場合
一番多いのは、「損害賠償請求の金額が高額すぎる、支払えない」という反論に、請求者側が一切引かない場合です。
支払う側としては、現実的に支払える金額に落ち着けたいと考えますが、請求する側はできるだけ多く受け取りたいと考えます。
通常は交渉している間にお互い納得できる金額に落ち着きますが、これが最後まで折り合わない場合に裁判に発展します。
次に、不倫の事実を否認するケースです。請求された側が「不倫なんてしていない」として支払いを拒否するケースです。
確定的な証拠がない場合には、請求された側がこれで逃げ切るケースもありますが、請求者側が不倫の証拠を有している場合には、裁判を起こすケースもあります。
2.裁判の効力
裁判になると、裁判官が判決を下した金額を支払うことになります。
裁判の判決の効力が確定した場合、仮に金額に納得できないとしても支払わなければいけなくなってしまいます。
交渉の場合にはある程度減額交渉などで対応でき、一定程度の納得をした上で支払いをすることができますが、判決の場合は金額に不服があっても、支払いを強制されます。
仮に、判決を受けて任意に支払いを行わない場合には、強制執行が行われ、給与や預金が差し押さえられるなどにより、強制的に支払わされることになってしまうのです。
逆に、請求が認められない場合には、判決の効力として同じ案件については基本的に二度争えないため、支払いはしなくて済むようになるでしょう。
3.不倫慰謝料請求の裁判の流れ・期間・費用
では、不倫慰謝料の裁判が起こされたら、どのような形で進んでいくのでしょうか?
また、裁判の期間や費用についてもご説明いたします。
(1) 不倫慰謝料請求の裁判の流れ
不倫慰謝料の裁判は、以下の順序で進んでいきます。
- 訴状が届く
- 第一回口頭弁論
- 第二回口頭弁論(その後、第三回口頭弁論~と続きます。)
- 和解の勧告
- 証人尋問・本人尋問
- 判決
- 納得できない場合は、控訴
まず、慰謝料を請求する側が訴状を裁判所に提出します。裁判所で形式的な訴状審査を行い、条件を満たしている場合は訴状が受け取られます。
裁判所は、訴状と期日の呼び出し状を相手方(被告)に送付します。このとき、第一回口頭弁論期日も指定されます。
訴状が届いたら、絶対に無視はしてはいけません。仮に無視した場合は請求者の主張通りに裁判が進み、判決が確定した場合には納得できない金額の慰謝料を支払うことになるでしょう。
第一回口頭弁論期日は、訴状送付から約1ヶ月程度で開かれます。第一回口頭弁論の一週間前程度に被告が答弁書を提出します。
(第一回口頭弁論は欠席でも構いません。請求棄却の答弁書を出すことが大切です。)
第二回口頭弁論は、第一回の期日から約1ヶ月後に開かれます。第二回以降の口頭弁論では、準備書面を作成し、それぞれの主張と反論を行います。主張や反論を裏付ける証拠がある場合はこれも提出します。
なお、第一回口頭弁論以降は、口頭弁論の代わりに、争点整理をするために弁論準備手続きという手続きが行われることがあります。
当事者の主張や証拠が出揃うと、裁判所から和解が提案されます。これに合意する場合には、和解調書が作成され、確定判決と同様の効力が生じます。
和解に応じない場合には、次の尋問手続きに入ります。
証人尋問、本人尋問では、書類上の主張や証拠のみで判断し難い部分について質問を受けます。
尋問後に尋問によって心証を形成した裁判官から、和解の話がされることもありますが、その和解がまとまらなかった場合は、最終的に、裁判に出た全ての主張、証拠をもとに裁判官が判断を下します。
支払いを認める場合には、「金○○を支払え。」という判決が下されるでしょう。請求を認めない場合は、「請求を棄却する。」という内容が言い渡されます。
判決が「確定」するまでには2週間ありますので、この期間に控訴するかどうかを判断します。
控訴する場合には、控訴審にて裁判が続くことになります。
控訴しない場合は、判決が確定します。
(2) 不倫慰謝料請求の裁判の費用
では、不倫慰謝料請求の裁判費用はどれくらいかかるものなのでしょうか。
訴えを提起する場合には裁判所に一定の手数料を納めることになります。具体的には、以下の費用がかかります。
- 収入印紙代
- 郵便切手代
収入印紙の代金は請求金額にもよります。たとえば、100万円を請求する場合で10000円、300万円なら20000円かかります。
郵便切手代は、数千円程度で収まるでしょう。裁判所に納める費用はそれほど高額ではありません。
なお、訴えられた側の場合は、少なくとも訴訟終了まではこれらの手数料はかかりません。あくまで訴える側である原告が最初に支払う費用となります。
ただし、少なくとも一部の敗訴をするなど判決の内容を踏まえ、判決後訴訟費用額確定処分の申立てがされた場合、費用の負担が生じることがあります。
(3) 不倫裁判の期間
では、不倫裁判にかかる期間はどのくらいなのでしょうか?
裁判の流れでお伝えしたように、訴状が提出されて口頭弁論が開始されるまでに1ヶ月、第二回口頭弁論までに1ヶ月程度と、各段階に至るまでに結構な時間がかかります。
和解に応じる場合には、3ヶ月〜半年程度で裁判が終結することもありますが、応じない場合には長期化することも多いため、1年程度、あるいはそれ以上かかるかもしれません。
民事裁判は時間がかかるので、早く解決したい気持ちが大きいなら、できる限り交渉で解決する方が良いでしょう。
4.不倫慰謝料請求裁判で不利にならないために
最後に、不倫慰謝料請求の裁判で不利にならないための対応策についてご説明いたします。
(1) 訴状が届いたら弁護士に相談
まず、訴状が届いた段階で弁護士に相談してください。
民事裁判では法律の知識が必要不可欠ですので、弁護士に依頼し適切な答弁書を提出すべきです。
裁判を実際に経験したことのない方がほとんどだと思いますが、法律の知識のない方が裁判に立ち向かえるほど甘くはありません。
ご自身が納得できる結果を出すためにも、専門家である弁護士に依頼するのが一番です。
また、まだ交渉段階ではあるものの、「話し合いが進まない」というお悩みをお持ちの場合も弁護士に相談すべきです。専門家が仲介するだけで話し合いが円滑に進むことは珍しくありません。
裁判になると解決まで長期化することも珍しくないため、早期解決を目指すなら弁護士に依頼すべきです。
減額交渉はもちろんのこと、仮に裁判になったとしても力を尽くしてくれるでしょう。
(2) 適切な反論や証拠を提示する
不倫慰謝料の裁判で勝つ、もしくは有利に進めたいなら、できるだけ「不倫をしていない」もしくは「減額要素となる」客観的な証拠を集めるべきです。できれば訴えを起こされる前に自分の主張を裏付ける証拠を揃えておくべきです。
弁護士なら必要な証拠や主張について的確なアドバイスができます。
請求された金額に不服がある場合や現実に支払えないような金額である場合も、預金や給料などを示し、請求された金額の支払いが難しいことを相手に伝えることができるでしょう。
同様に、高額な慰謝料を要求されている場合には、判例や相場からかけ離れていることを相手方に説明することで減額してもらうことも可能です。
5.不倫で裁判を起こされたら弁護士に相談を
不倫裁判を起こされてしまったら、すぐに適切な対応をしなければいけません。
交渉段階では弁護士がついていなかった場合でも、裁判では必ずと言って良いほど弁護士が必要になります。
不倫慰謝料額を減額、あるいは不当に支払わずに済むようにするためにも、法律の専門家である弁護士に相談してください。
また、交渉段階の場合でも、当事者だけで話し合いを行うよりも、弁護士をつけた方がスムーズに話し合いが進みます。
裁判を避けたいという場合は、お早めに不倫慰謝料請求に強い弁護士にご依頼ください。