同性との不倫は慰謝料請求できる?
配偶者の不倫が発覚したら「慰謝料請求をする」「離婚をする」などの対応をとることができます。
ですが、その不倫相手が同性だった場合、慰謝料請求や離婚が可能なのか、疑問に思う方も多いでしょう。
そこで今回は「同性との不倫で慰謝料請求が可能なのかどうか」について解説します。
目次
1.同性との「不倫」は成立し得るのか?
法律上、慰謝料請求できる不倫とは「不貞行為」を指します。不貞行為とは、配偶者以外の人と肉体関係を持つこといいます。
肉体関係とは性交渉のことであり、キスやハグ、デートなどは含まれません。
どこからが不倫なのかという定義は人それぞれですが、慰謝料請求という法律上の権利行使となると、「何度かディナーを楽しんでいただけ」「キスやハグはしたが性交渉はしていない」という段階では慰謝料請求は難しいでしょう。
では、不倫相手が同性だった場合でも慰謝料は請求できるのでしょうか?
「性交渉を持った配偶者以外の人の性別」については、地裁レベル(名古屋地裁昭和47年2月29日)にて「異性同士」を指すと判断されたことはありますが、最高裁判断(1973年11月15日)では特に限定はされていません。
つまり、同性同士の不貞行為の場合、慰謝料支払い義務は認められる可能性はありますが、明確な判断が確立している段階ではなかったということです。
もっとも、後でお話しするように、ここ最近では同性に対する不倫慰謝料請求が提起され認められた事例も出てきています。
今後は、同性との不貞行為が成立し、慰謝料請求が認められる可能性は高いといえるでしょう。
2.同性との不倫で慰謝料請求を認めた判例
東京地裁平成16年4月7日判決では、妻が3人の女性と性的関係を持ったことについて不貞行為であると認めた上で、損害賠償請求を認めました。
また東京地裁令和3年2月16日判決でも、妻と不倫相手の女性の不倫について慰謝料の支払い義務を認めています。
平成16年判決では、「不貞」の定義につき、同性との性的関係を持つことも含まれると判断しています。
令和3年の判決では「婚姻生活の平和を害するような性的行為」が不貞行為であることを判示し、同性間の不貞行為でも夫婦生活が危機に晒される事態は想定可能であると判断しました。
これら以外でも、女性同士のカップルの事例で、他の男性と性的関係を持ち破局した事例について慰謝料請求が認められた事例もあります(東京高裁令和2年3月4日)。
3.同性との不倫慰謝料が認められる要件
上記の判例から、同性との不倫で慰謝料請求が認められる要件としては、以下を満たす必要があると考えることができます。
1つ目は、「婚姻生活の平穏を害するような性的行為があった」ことです。原則として性交渉を指しますが、性交類似行為であったとしても認められる可能性はあります。これに異性か同性かは問われません。
2つ目は、「婚姻」または「婚姻に準ずる関係」があることです。判例では既婚の場合に慰謝料請求を認めているだけでなく、内縁関係の場合でも慰謝料請求を認めています。
現在の日本では、同性同士の場合、法律上の婚姻関係を持つことはできません。
ただし、近年では同性同士でも各自治体が進めるパートナーシップ制度により、同性カップルに証明書を発行することで、配偶者に準ずる扱いを認めています。
パートナーシップ制度を利用することのメリットは、病院で家族として取扱う、公営住宅に入居できるなどです。
法的権利は与えられないと考えられてきましたが、不倫慰謝料請求に関しては、東京高裁令和2年の判決により「婚姻に準ずる関係」として内縁関係と同様に法的保護を与えることが可能といえます。
以上から、同性との不倫の場合でも上記を満たす場合には慰謝料請求は可能であり、認められる可能性も十分にあるといえるでしょう。
4.同性との不倫の慰謝料額
同性との不倫について慰謝料請求をする場合、どれくらいの金額を請求できるのでしょうか。
(1) 不倫慰謝料の相場
実は、不倫慰謝料については、請求する側と請求される側が合意すれば、常識的な範囲内であればいくらでも成立します。つまり、不倫慰謝料の額にはこれといった決まりはないのです。
しかし、相手が支払えない額を提示しても、実際に交渉が成立することは難しいですので、妥当な金額を提示することが重要です。また、常識の範疇を超えてあまりにも高額であると、合意が公序良俗違反で無効となることもあり得ます。
一般的な不倫慰謝料の相場は、50万円〜300万円といわれています。金額に大きな差がありますが、これは個々の事情を考慮することにより金額が変わってくるためです。
不倫慰謝料は、不倫期間・回数、婚姻期間、当該不倫による離婚の結果の有無、子どもの有無、請求された側の資力、などを総合考慮することによって金額を決めていきます。
不倫の期間が長ければ増額事情になり得ますし、逆に1回限りの関係などごく少い回数やごく短い期間なら婚姻生活に及んだ影響は少ないと考えられ慰謝料額も下がります。
様々な事情を考慮した上で慰謝料の額は決まるため、相手に請求すべき適切な額については慰謝料請求に強い弁護士に相談すべきです。
[参考記事]
不貞行為の慰謝料相場の判例を解説
(2) 同性との不倫慰謝料は低くなる可能性
同性との不倫の場合、これまでの判例が少ないため一概にいくらになると判断するのは難しいです。
実際の判例を見てみると、東京地裁令和3年2月16日判決では11万円の慰謝料しか認められませんでした。一般的な慰謝料相場から考えると、これは圧倒的に少ない金額だということがわかります。
他方、東京高裁令和2年3月4日の女性同士のカップルの事例では、110万円の慰謝料を認めました。この事例では、アメリカにて同性婚が成立していること、7年の同居実態があること、結婚式があること、出産を計画していたこと等を考慮したことが影響しています。
この2つの判決から考えると、婚姻に準ずる関係であった場合でも110万円の慰謝料が認められているのですから、「同性」であることが慰謝料金額に影響したとは考えにくいでしょう。
以上から、同性同士の不倫であることを理由に慰謝料金額を低く見積もる必要はありませんが、事例が少ないこともあり、慰謝料金額の見極めは難しくなる可能性はあります。
弁護士に相談した上で慰謝料額を決定することをおすすめします。
5.浮気・不倫された場合の慰謝料請求は弁護士へ
今後は同性同士の不倫に対する慰謝料請求も増えると予想されますので、浮気・不倫があるならば積極的に慰謝料請求を検討すべきでしょう。
泉総合法律事務所は、不倫慰謝料に関する事件を数多く取り扱っています。
不倫慰謝料の請求をお考えなら、ぜひ当法律事務所の弁護士にお任せください。