弁護士の内容証明が怖い!「脅迫・恐喝」と「慰謝料請求」の違い
いきなり弁護士から内容証明郵便が送られてくると、誰でも動揺し、不安になるでしょう。
お金を請求されている、訴えると言われているのがわかると、「これって脅しでは?」と疑いたくなる気持ちもあるかと思います。
しかし、弁護士から送られてきた内容証明文書は、脅迫にあたる文書であることはまずありません。
今回は、弁護士から内容証明郵便を受け取った場合の効果と正しい対応方法をご説明します。
目次
1.弁護士の内容証明郵便は脅迫ではない
(1) 内容証明郵便とは?
まずは、内容証明郵便がどのような機能を持っているのかについてご説明します。
内容証明郵便という言葉は聞いたことがあっても、実際に何のために使われる文書なのかご存知ない方も多いのではないでしょうか?
内容証明郵便とは、いつ、誰から誰に、どのような内容の文書を送ったのかを証明する制度がある郵便を指します。
郵便局が行なっているサービスの一部であり、家賃の未払い請求や損害賠償請求、契約の解除通知などで利用されています。
内容証明郵便を利用することで、将来的に裁判になる可能性や法的に相手方と対立する可能性がある場合は、送付した文書の内容や相手が受け取った日付等をきちんと証明できるのです。
法的文書を送る際に利用されていると聞くと、弁護士が利用するだけというイメージがあるかもしれませんが、内容証明郵便は一般の方でも利用することができます。
例えば、不倫相手に慰謝料請求をする場合、弁護士を通さずともご自身で文書を書き、相手に送付することもできるということです。
[参考記事]
不倫慰謝料請求は自分でできる?
(2) 脅迫罪・恐喝罪になる内容
弁護士から送られてきた内容証明郵便を見て、「内容が怖い、脅されている」と感じる方もいらっしゃいます。
確かに、内容によっては慰謝料の支払いなどお金に関することが書かれていたり、「法的措置」など裁判を連想させる言葉が記されていたりすることも多いため、「怖い」と感じるのも分かります。
しかし、冒頭でも述べたとおり、弁護士から送られてきた内容証明文書は、脅迫にあたる文書であることはまずありません。
本人から直接送られたものである場合は、法的なことを理解していないケースもあり、怒りから脅迫めいた文書を送りつけてくる可能性がありますが、弁護士はその点を熟知しているため、脅迫あるいは恐喝には当たることはないでしょう。
脅迫や恐喝に当たる可能性がある内容としては、相手や相手の家族を「殺す」「怪我をさせる」「傷つける」「ネットにバラす」「公表する」「家を燃やす」「財産を奪う」などの文言がある場合です。
本人や家族に危害を加えるという「害悪の告知」がある場合は脅迫罪(刑法222条)に、また、上記のような言葉を用いて財産処分を促す内容証明郵便が届いた場合は恐喝罪(249条1項)に当たる可能性があります。
また「会社にバラす」「ただでは済まない」などの文言も同様です。
このように、脅迫罪や恐喝罪に当たる内容証明郵便が送られてくる可能性はありますが、弁護士からの文書の場合は正当なものであると理解した方が良いでしょう。
なお、慰謝料請求や「訴える」という発言自体が「害悪の告知」では?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、不倫をされた被害者は慰謝料を請求する権利を有していますから、慰謝料を請求する行為は、その権利の範囲内でありかつその方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えない限り、正当な権利行使であって違法な行為とは言えません(最高裁昭和30年10月14日判決)。
2.弁護士からの内容証明で注意すべき点
脅迫ではないとはいえ、弁護士から内容証明郵便が届いた場合、その後裁判になることはあるのでしょうか。
また、お金を請求されている場合、記載の金額通りに支払いを行わなければいけないのでしょうか。
ここからは、内容証明が届いた後にどうなるのか・どうするべきかについてご説明します。
(1) 無視を続けると裁判の可能性
内容証明郵便の内容として、「お支払いいただけない(期限までに回答しない)場合は法的措置を取らせていただきます」などの文言が書かれている場合があります。
「法的手続きに移行」が具体的に何を指すのかというと、訴訟手続きに入るということです。裁判で訴えて、内容証明郵便に書かれた内容を実現することを示唆しています。
そのため、内容証明郵便が届いたら放置することはお勧めしません。裁判を回避するためには、相手と連絡を取り、交渉を開始することが適切でしょう。
話し合いをすることで、裁判を起こされない可能性は高くなります。
内容証明郵便が届いても必ず訴訟になるわけではありません。しかし、放置すると訴訟の可能性は高くなるのです。
[参考記事]
慰謝料請求(内容証明郵便)を無視・拒否したらどうなる?
(2) 請求金額を全て支払う義務はない
お金の支払いを要求されている場合、「支払う根拠がない」「期限までに支払えない」「高額すぎて支払えない」などのケースもあるでしょう。
実際のところ、内容証明郵便が届いても、必ず書かれた金額を支払わなければならないというわけではありません。
寧ろ、相手方に言われるがまま支払ってしまうと、必要のない高額なお金を支払ってしまうケースも多く、ベストな対応とはいえません。
内容証明郵便は、あくまで「いつ相手方に当該文書の内容を届けたか」を証明するにすぎないため、内容が正しいことの証明までは含んでいません。つまり、内容が適正でない可能性もあるのです。
慰謝料請求の場合は、内容証明に書かれている金額が相場よりもかなり高いケースも少なくありません。
そのため、お金の支払いに関する内容証明郵便が届いたとしても、すぐに支払う必要はありません。
3.内容証明郵便への正しい対応方法
では、内容証明郵便にはどのように対応するのが正しい方法なのでしょうか。
最後に、内容証明郵便への適切な対応方法についてご説明します。
(1) 無視せず期限までに相手と連絡を取る
弁護士から内容証明郵便が届いたら、内容に驚き、慌てて中身をきちんと確認せずに放置してしまう方が多いです。
しかし、まずは内容をしっかりと確認してください。誰がいつまでに、どのようなことを要求しているのか、そして請求の根拠を確認してください。
慰謝料を請求されているなら、なぜ請求されているのか、その理由が事実に即したものか、心当たりがある内容なのかが大切です。
全く心当たりがない場合は放置しても問題ないとも考えられますが、念のため弁護士に相談することをおすすめします。
また、内容証明郵便には、期限が記されていることが一般的です。そのため、この期限までに相手と何らかの形でコンタクトを取ることをおすすめします。
連絡を取る際、相手の主張に納得できない場合は、確定的なことは言わないようにしてください。
「必ず支払う」などという言葉を用いず、内容証明郵便の内容について説明を求めた上で、「○月○日までに回答いたしますので、お時間をいただけますと幸いです。」と丁寧に対応しましょう。
その上で、弁護士などの専門家に相談することが必要です。
特に、内容証明郵便の内容に心当たりがある場合は、適切に対応する必要があります。
[参考記事]
慰謝料請求の回答書の文例・書き方
(2) 事実の場合は減額交渉を行う
内容証明に書かれていることが事実である場合は、示談交渉を進めていく必要があります。
もっとも、相手の請求全てに応じなければいけないわけではなく、金額の交渉はできます。減額交渉を行えば、支払う金額を大幅に減額できる可能性も十分にあります。
減額交渉に関してはご自身で行うことも可能です。しかし、相手に弁護士がいる場合は、やはり交渉格差があるため、ご自身での交渉はおすすめできません。
というのも、弁護士は相手方の出方を熟知しているため、適切な反論ができないと訴訟に踏み込む可能性も高くなってしまうためです。
そのため、こちらも弁護士に依頼して、対等に交渉に臨む方が、減額できる可能性や穏便に解決できる可能性は高くなるといえます。
弁護士に依頼すれば、相手の主張を整理して、こちらの言い分について適切に反論してくれるため、精神面でも安心することができるでしょう。
トラブルを引きずらないためにも、弁護士に依頼した上で、減額交渉を進めていくのが適切です。
[参考記事]
慰謝料が払えない!?高額な不倫慰謝料を請求されたときのポイント
4.内容証明郵便が届いたら弁護士にご相談を
内容証明郵便を見て「訴えると言われている!脅迫だ!」と思ってしまうのは仕方ありません。しかし、相手方の弁護士から送られてきたものであれば、そのまま放置するのは得策ではなく、何らかの対応を取るべきです。
不倫慰謝料の減額交渉をする場合は、泉総合法律事務所の弁護士にお任せください。
送られてきた内容証明郵便の内容を確認して、取るべき方針をアドバイスいたします。
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